kyoyamayukoのブログ

私の墓にはルピナスを飾っておくれ

もうひとつの声(4)ーーー今を生きる仙人・大原扁理、高原の世界のバイブル

このシリーズはひとまず終えたつもりだったんです。 でも『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』で紹介されていた大原扁理の本を読んでみたんです。タイトルは知っていたんです。いまどき流行りの低年収でいかにやりくりするかという本かと思っていま…

『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』の感想

ワクワクするタイトルです。 新しい社会ってどうやって生まれてくるのだろうか。 ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』*1をもじったタイトルなのがわかります。 著者は2010年代にひろがったミニマリズム(最小限主義)の現象と消費社…

SNS 少女たちの10日間

日本と同じようにチェコでも未成年、しかも12才の女の子たちが オンラインチャットでつながり、性被害を受けるという。 若く見える女優(12才以上だがおそらく未成年の年齢)3人が「12才」設定でオンラインチャットしたらどうなるか、というドキュメンタリ…

学校で性暴力被害がおこったら

こちらマニュアルは学校管理下で起きた性被害の対応マニュアルです。 「学校で性暴力被害がおこったら」 https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://onestop-hyogo.com/wp-content/uploads/2020/07/tebiki_web.pdf&ved= ぜひ各自治体の…

もうひとつの声、はるかな呼び声

blog記事のシリーズがまとまったので、ここでひとつにまとめよう。元橋利恵さんの『母性の抑圧と抵抗』*1を読んで最新のケアの倫理を学びました。ケアの倫理は近代思想が前提としている「自立 /自律した自我」を相対化し、先の思想にむけた新しい自我論にとっ…

もうひとつの声・番外編ーーーべてるの家、当事者の集まり

「自立/自律した個人」ではなくても生きていく方法。今回の流れでは取り上げなかったが、日本で最も有名な事例は「べてるの家」ではないだろうか。 べてるの家とは、北海道浦河町に設立された精神疾患の当事者が活動する拠点であり、職・住をともにして暮ら…

もうひとつのささやきーーー不労所得という欲望

もうひとつの「声」ではなくもうひとつの「ささやき」。声ではなくささやきにしたのは、悪魔*1のささやきをイメージしたから。働きたくない、働くのが嫌だという層のもうひとつの生き方として不労所得を得るという生き方がある。IT技術の進化によって、これ…

もう一つの声(3)ーーー半分降りてつながる。素人の乱、ギークハウス、しょぼい革命、山奥ニート

近代の「自立/自律した個人」ではない生き方の模索として、前回は90年代後半以降に社会に広がった厭労働感についてまとめた。 kyoyamayuko.hatenablog.com 働きたくない。働けない。あんなに頑張れない。なんで働かなければいけないのだろう。安定した大手…

現代人はなぜ生きることの意味を失ってしまうのか

前回のblog記事は苦しい内容でした。 kyoyamayuko.hatenablog.com 荒野の砂つぶのような存在。割れた地面の底から吹き上げる風。虚しく寂しい。寒々しい。この虚しさはどこから吹き上げてくるのか。なぜこんなに虚しいのか。こんなにも虚しいのになぜ人は生…

まなざし不在の地獄、生の慟哭、大量殺人もしくは子殺し

もう一つの声(3)を書こうと思ったのだけど、『令和元年のテロリズム』を一気読みしてしまったので、「自律/自立した個人」であることから疎外された苦しみ、ダークな側面について書いておきたい。「弱者」男性の身の奥底から響く雄叫びについて触れておかな…

もう一つの声(2)1ーーー脱サラ、フリーター、そしてニート、ひきこもりの登場

近代の「自律/自立した個人」ではない生き方の模索として、前回はコミューンまで書きました。その続きです。 kyoyamayuko.hatenablog.com 「半分降りる」生き方を書く前に、もう一つ押さえておきたい生き方を書いておこう。 脱サラ、フリーター 日本では1970…

コントが始まる

テレビをほとんど見なくなってしまいましたが、このドラマだけは見ていました。 仲野太賀くんが出ていると教えてもらい、見はじめたらはまりました。 6月19日が最終回。 どんな終わり方をするのだろうか、楽しみにしていました。 以下、ネタバレ。ご注意あれ…

なぜ日本は「侵略」という認識をもたなかったのか

ようやくこの問いにたどり着きました。 私は「正しい」歴史認識の闘士ではないし、正直に言うとグロテクスな好奇心から中帰連の証言を趣味で読んでいました*1。グロテクスな好奇心とは人間の残虐な行為への関心のことです。最低ですね。 しかし、読めば読む…

飯守重任ーーー体制側に過剰適応する男

中国帰還者連絡会(中帰連)はヒダリと言われているが、日本人戦犯のなかでミギに転向した人もいるので取り上げよう。その名は飯守重任(いいもりしげとう)。興味深い人物である。 飯守重任 ※写真の引用*1 ※日本人戦犯についてはこちら kyoyamayuko.hatenab…

古海忠之(3)ーーー撫順管理所、監獄での「認罪」

中国の「日本人戦犯」はご存知だろうか。 こちらの記事のサブタイトルでもあるが、そもそも中華人民共和国の「日本人戦犯」は、極東裁判のA級戦犯やシベリア抑留ほど知られていない。まずは中国の「日本人戦犯」の全体像を示し、古海が日本人戦犯としてどの…

古海忠之(2)ーーー日本人戦犯として

『獄中の人間学』*1に沿って敗戦後の古海の流れを追いたい。昭和20年9月に新京でソ連軍に逮捕されてシベリアへ抑留、5年間に及んだ。 ソ連のラーゲルでの日々 ソ連の取り調べを受けているうちに相手の意図が分かってきた。満州国にも侵略の意図があったの…

古海忠之(1)ーーー渡満から満州財政、そして阿片政策

「満州国」総務庁次長の古海忠之に関心をもっている人は今の日本では数名しかいないかもしれない。古海忠之を知れば知るほどひかれていくのだが、これまで読んだ本を踏まえて、忘れ去られつつある古海忠之を多角的に描いていきたいと思う。 古海忠之※注1 渡…

阿片の中国史ーーー薬物依存は財政赤字を助く。富と流通のあだ花・芥子

趣味で中帰連や日本人戦犯関連の本を読み進め、その流れで東亜同文書院を知り、里見甫の本を読むことで中国の「阿片」問題がひっかかるようになりました。また、あれだけ蔓延した阿片はなぜ中国から消えたのか疑問でいっぱいになりました。中国の阿片問題の…

東亜同文書院と地下人脈(2)ーーー里見甫を中心に

こちらの記事の続きです。今回は里見甫を中心にまとめていきます。 kyoyamayuko.hatenablog.com 『日中を懸ける』を読んで東亜同文書院について興味を持ちました。この本は巻末に索引までついているのですが、里見の名前は一切出てきません。私の中では里見…

フィールズ・グッド・マン

FEELS GOOD MAN 気持ちいいぜ このドキュメンタリー映画、めちゃ面白かったです。 マンガのカエルキャラ・ぺぺがネットミームになり、2chのアメリカ版の4ch(というか2chを真似したアメリカ版匿名サイト)で非モテのアイコンになり、トランプ大統領選の…

「満州国」総理の息子、張夢実

日中戦争関連の本を読み進めているのですが、こちらの本は日本戦犯の管理所長の回想です。日本戦犯についてはもう少し本を積み重ねてから書きたいので今回ははしょりますが、満州国、清王朝末期を支えた満州人の戦犯の話が興味深く、他では情報があまりない…

「あの頃。」と「くれなずめ」

朝ドラ「おちょやん」で若葉竜也くんのファンになり、「若葉くん」が出演しているからたまたまこの二つの映画を見たのだ。ほんとにたまたまだ。空き時間があるから映画を見よう、若葉くんが出ているからこの映画でも見るか。そんな軽いノリで見ただけなのだ…

ミッドナイトスワン

三回、見に行ってしまった。一回目は凪沙の物語をとして圧巻のストーリーを、二回目は一果に寄り添って、三回目でようやく全体を見通しながら。毎回、感動して放心してしまう映画でした。 midnightswan-movie.com 一言で語るのは難しい映画ですが、何度見て…

【追加】東亜同文書院と地下人脈(1)ーーー反戦運動と阿片ネットワーク

※20210601 中西功記事追加 ,西里龍夫の情報追加 ※20210531 西里龍彦、中西功の部分を追加 ーーーーーーーーーーーーーー たまたまブックオフで見つけたこの本を読んだらとても面白かったのだ。日本人が上海で設立したビジネスマン育成の大学であり、愛知大学…

生きろ 島田叡[あきら]ーーー戦中最後の沖縄県知事

こんな知事がいたのか。軍部が絶対の時代、「軍民一体」を推し進める軍に対し県民の命を重視した。「県庁解散」という手法で軍命から職員と県民を解放する。驚きました。 ikiro.arc-films.co.jp 【ネタバレ注意】 太平洋戦争末期、1945年1月に沖縄県知事に…

学生運動と少女マンガーーー池田理代子と竹宮惠子

竹宮惠子の『少年の名はジルベール』(以下、竹宮自伝)は、萩尾望都への嫉妬心を暴露したことで有名になりましたが、私としては学生運動が少女マンガ家に影響を与えていたことに驚きを禁じ得ませんでした。これまで、いわゆる花の24年組のコミックを読ん…

花の24年組、大泉サロン、少女漫画革命の言葉の由来ーーー萩尾望都、竹宮恵子、増山法恵

以前に花の24年組、大泉サロン、少女マンガ革命について情報収集してブログにまとめたが、その後、本を読み込み更に詳しく分かってきたので比較したものをまとめたい。 【情報収集】萩尾望都、竹宮恵子、増山法恵 - kyoyamayukoのブログ 大泉サロンの由来 竹…

三者関係が萩尾望都作品に与えた影響

萩尾望都の『一度きりの大泉の話』が話題ですが、「大泉サロン」が解体され、竹宮恵子、増山法恵、萩尾望都の三人の関係も変化する。竹宮本によれば大泉長屋の契約更新の時期が来たので「よい機会」と考えて新居を決めたのだ。もちろん、竹宮恵子にとっては…

【10/7 追加】【情報収集】萩尾望都、竹宮恵子、増山法恵

■追加情報 20211007 竹宮惠子さんのblogで増山法恵さんが亡くなったことを知りました。お悔やみ申し上げます。2021年6月30日に永眠されました。原因は不明だそうです。1日におきに介護士が来ていたそうで、様々な病気を抱えていたそうだ。竹宮惠子のblogの…

もうひとつの声(1)ーーー全部降りたら大変だった。コミューンの実践

「弱者男性」論は近代思想の「自立/自律した個人」モデルから排除された、疎外された「何か」だとするならば*1、自立した個人では「ない」生き方は社会を変えていくことができるのだろうか。 大きな山は変わらない姿であり続けるかもしれないが、少しずつ土…