kyoyamayukoのブログ

私の墓にはルピナスを飾っておくれ

弱者男性

システムにはできず脆弱さにできることーーー『いのっちの手紙』を読んで

話題になった本です。 精神科医斎藤環と「いのっちの電話」という希死念慮のある方々の相談電話をしている坂口恭平さんの文通対談です。坂口恭平さんは、電話相談の仕事ではなくアーティストとして活動しながら電話相談するという精力的な方ですが、ご本人は…

ホモソーシャルな関係の乗り越え方ーーー『「非モテ」からはじまる男性学』の感想

ネットでも日常でも「非モテ」という言葉は聞かれるし、男性自ら「俺は非モテ」と自称するする人もいるが、非モテとはいったんなんなのだろうか。一般的なイメージでは「モテない男」というイメージだし、weblioでも同様の定義をしている*1。 「非モテ」の…

もう一つの声(3)ーーー半分降りてつながる。素人の乱、ギークハウス、しょぼい革命、山奥ニート

近代の「自立/自律した個人」ではない生き方の模索として、前回は90年代後半以降に社会に広がった厭労働感についてまとめた。 kyoyamayuko.hatenablog.com 働きたくない。働けない。あんなに頑張れない。なんで働かなければいけないのだろう。安定した大手…

現代人はなぜ生きることの意味を失ってしまうのか

前回のblog記事は苦しい内容でした。 kyoyamayuko.hatenablog.com 荒野の砂つぶのような存在。割れた地面の底から吹き上げる風。虚しく寂しい。寒々しい。この虚しさはどこから吹き上げてくるのか。なぜこんなに虚しいのか。こんなにも虚しいのになぜ人は生…

まなざし不在の地獄、生の慟哭、大量殺人もしくは子殺し

もう一つの声(3)を書こうと思ったのだけど、『令和元年のテロリズム』を一気読みしてしまったので、「自律/自立した個人」であることから疎外された苦しみ、ダークな側面について書いておきたい。「弱者」男性の身の奥底から響く雄叫びについて触れておかな…

フィールズ・グッド・マン

FEELS GOOD MAN 気持ちいいぜ このドキュメンタリー映画、めちゃ面白かったです。 マンガのカエルキャラ・ぺぺがネットミームになり、2chのアメリカ版の4ch(というか2chを真似したアメリカ版匿名サイト)で非モテのアイコンになり、トランプ大統領選の…

「あの頃。」と「くれなずめ」

朝ドラ「おちょやん」で若葉竜也くんのファンになり、「若葉くん」が出演しているからたまたまこの二つの映画を見たのだ。ほんとにたまたまだ。空き時間があるから映画を見よう、若葉くんが出ているからこの映画でも見るか。そんな軽いノリで見ただけなのだ…

もうひとつの声(1)ーーー全部降りたら大変だった。コミューンの実践

「弱者男性」論は近代思想の「自立/自律した個人」モデルから排除された、疎外された「何か」だとするならば*1、自立した個人では「ない」生き方は社会を変えていくことができるのだろうか。 大きな山は変わらない姿であり続けるかもしれないが、少しずつ土…

ケアの倫理と「弱者男性」論ーーー自律した個人モデルから排除された男性はネット寄せ場で暗黒思想を紡ぎ出すしかないのか

フェミニズムは、近代思想が前提とする「自立/自律した個人」モデルが女性を排除した抽象的な概念であることを明らかにしたのですが、実は一部の男性にとっても、特に「弱者男性」にとっても同じことが言えるのだと気づきました。この「自律した個人」モデ…