kyoyamayukoのブログ

私の墓にはルピナスを飾っておくれ

もうひとつの声・番外編ーーーべてるの家、当事者の集まり

 「自立/自律した個人」ではなくても生きていく方法。今回の流れでは取り上げなかったが、日本で最も有名な事例は「べてるの家」ではないだろうか。

 べてるの家とは、北海道浦河町に設立された精神疾患の当事者が活動する拠点であり、職・住をともにして暮らす場所だ。浦河町の日赤病院の精神科の患者たちの活動から始まり、北海道地方に属する浦河町の特色を生かし、日高昆布の販売を開始した。統合失調症を抱えているため、時間通りにはできないし、手早くもできない。自分たちなりに試行錯誤しながら稼ぎ、その稼ぎで衣食住を賄う。

 事業だけではなく、当事者グループらしく自分たちの症状について語り合う自助グループ活動もしている。有名なものに「当事者研究」があり、自分の見る幻想などの症状を自分なりに分析して発表するのだ。ユニークな活動は当事者とそれを支える精神科医川村敏明、ソーシャルワーカー向谷地生良によって展開されている。

 「べてるの家」の活動を模倣した拠点が全国各地に作られていった。

 私は横川和夫の『降りていく生き方』で、べてるの家を知った。ここで「降りていく」というのは「普通」であることから「降りていく」という意味だ。「降りる」というと消極的でネガティブなイメージがあるかもしれないが、「降りていく」ことで「普通」だったら見えなかったものが見えてくる。「普通」に捕われるから苦しい。「普通」に自分を合わせていくから辛い。そんな「普通」から降りていくと新しい視界が開けていくのだ。自分らしさを取り戻す。降りていく作法を学ぶことができるだろう。

 

降りていく生き方 : 「べてるの家」が歩む、もうひとつの道

 

悩む力――べてるの家の人びと

 

治りませんように――べてるの家のいま