テレビをほとんど見なくなってしまいましたが、このドラマだけは見ていました。
仲野太賀くんが出ていると教えてもらい、見はじめたらはまりました。
6月19日が最終回。
どんな終わり方をするのだろうか、楽しみにしていました。
以下、ネタバレ。ご注意あれ。
3人組コントのお笑い芸人「マクベス」が解散する。
10年間やってきたけれど、この時間はいったい無駄だったのだろうか。
菅田将暉が演じる春斗は一人もんもんとする。
(他の二人は自分なりに答えをだしている)
これは「夢を追いかける」人たちすべてに関わる問いだろう。
お笑い芸人だけなく歌手でもスポーツ選手でも、
トップで輝けるのはごく一握りの人間なのだ。
このドラマはその一握りでは「ない」人たちの夢の畳み方の物語だ。
ドラマの始まりから「解散」で、10話かけて畳んでいく。
夢を畳みながら次に向かうために抱えていた問題を整理していく。
一昔前のドラマは「成功もの」が多かったはずだ。
苦労して成功する物語。最後はハッピーエンド。
正直いって、私は3人組を解散しても春斗だけはもう一度お笑いをやり、
一人成功するのではないかと想像していました。
「あのときの3人組があったから今の俺がある」という物語になるのではないか、
と昭和ドラマ脳な展開を予想していました。
見事に予想を外し、現実的な終わり方をしました。
一方で、では淋しい終わり方かと言えばそうではない。
解散の過程を丁寧に描くんだけれども、
それでもわいてくるこの10年間は無駄だったのではないかという空しさは、
熱烈なファンである里穂子の感謝の言葉で救われる。
働くのが怖くなった彼女を救ったのがマクベスのコントだった。
今後、いくら面白い芸人が出てきたとしてもあなた以上のものはない、
私にとって特別な芸人はあなたしかいない。
三人組は解散しても、彼らの作ったコントは里穂子に刺さった。
彼女が永遠に忘れない。
無駄ではなかった。
春斗はすべてを肯定することができた。
だから次のステップに向かう力となった。
このドラマは若者向けとは言っても出演者はアラサー設定だ。
一昔前のよう流行した10代向けの学生ドラマや恋愛ドラマは減少し、
アラサーを対象にしている時点でテレビの視聴者が高齢化している証拠だ。
夢に向かう過程ではなく夢の畳み方を丁寧に描く。
30才で折り合いをつけなければいけない。
それは芸能人である出演者の誰もが身に染みていることじゃないだろうか。
演技力に定評のある出演者ばかりだが、生々しい迫力があった。
突然、話は飛びますが朝ドラ「おちょやん」も
現実との折り合いの付け方のドラマでした。
おちょやんもコントが始まるも
現実を受け止め、折り合いをつけていく。
今までの苦労は無駄だったのか。
胸にふとわくむなしさに、
丁寧に描いた物語は「そうではない」と説得力を与える。
現実は厳しい。
勝ち負けは社会的評価に過ぎない。
問題は社会的評価ではなく、自分の心との折り合いの付け方だ。
人口減少社会の日本には必要な物語なのかもしれない。