kyoyamayukoのブログ

私の墓にはルピナスを飾っておくれ

財政

日本の通貨制度ーー江戸から戦前まで・金本位制の導入と廃止ーー

近世から近代へ。開国した日本にとって海外の国と貿易するリスクと直面することになります。江戸時代は米本位制で総じて安定した物価でしたが、開国したとたん金銀為替格差により、日本から国外へ金が流出して極端なインフレが起こり、物価が不安定になりま…

日本の通貨制度③金本位制の導入、廃止、そして「円元パー」政策の失敗ーーー松元崇『持たざる国への道』第二部軍部が理解しなった金本位制

前回は日本銀行を設立し、銀本位制を確立し、通貨がようやく安定したところまでまとめました。ここから金本位制の導入です。これが苦難の道なんですよね。 kyoyamayuko.hatenablog.com kyoyamayuko.hatenablog.com 今回も松元崇さんの本についていきたいと思…

日本の通貨制度②明治の通貨制度、日本銀行設立まで(銀兌換紙幣の発行)ーーー松元崇『持たざる国への道』第二部軍部が理解しなった金本位制

こちらのblogの続きになります。江戸から明治へ。いったい何が起こったのか。 kyoyamayuko.hatenablog.com 松元崇さんの本をまとめていきます。 太政官札の価格維持 幕末の金の大量流出で、明治維新政府が通過政策として最初に取り組んだのが、太政官札の価…

貨幣経済を否定したらどうなるか

岡本隆司のこちらの本は学びの多い本でした*1。まとめると大変なので最も興味深く読んだ点についてだけメモしたいと思います。まずはモンゴル帝国がどれだけ栄えて経済発展したのか、それに対してなぜ明は商業を否定する政策をとったのかをみていきたいと思…

【完】なぜ日本は戦争を選択したのか(18)「持たざる」国への道②華北分離工作、円元パー政策で外貨流出、日米通商条約の破棄ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(17)では、満州国の開発が本国の犠牲の上に成り立っていたことをまとめた。満州国、華北支配によって日本は国内の資本、労働力、そして正貨=外貨が流出して「持たざる」国へ自ら陥っていくのである。 今回は、円元パー政策によっていかに中国へ正…

なぜ日本は戦争を選択したのか(17)国内経済を犠牲にした満州開発ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(16)では、軍縮を支持していた世論が、盧構橋事件と連動して起きた通州事件で日本人居留民が虐殺されると、一気に軍部支持に傾いた。あっという間に軍拡のための予算がほとんど審議されず通ってしまった。明治維新からニニ六事件で高橋是清が惨殺…

なぜ日本は戦争を選択したのか(16)軍拡の時代:盧構橋事件、通州事件、第二次上海事変ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

このシリーズでは明治維新からニニ六事件まで、日本の近代史に沿いながら財政問題の流れを追ってきた。教科書的には明治政府は「富国強兵」、「殖産産業」のイメージがあり、強くて金もある「大きな政府」と捉えている人が大半だろう。私も松元崇さんの本を…

なぜ日本は戦争を選択したのか(15)軍事費抑制とニニ六事件の高橋是清暗殺で「財政規律」崩壊ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

前回では金解禁不況から回復させて健全財政政策を実施した。このシリーズをお読みになっている方はワンパタなので予測できているると思うが、明治憲法下での健全財政とは軍事費抑制なのだ。いつものパターンのはずだった。しかし、ニ・ニ六事件で高橋是清は…

【五・一五事件大幅修正】なぜ日本は戦争を選択したのか(14)金解禁不況からの回復と高橋是清の「健全財政」ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(10)(11)(12)では国際グローバルスタンダードであった金本位制が崩壊し、グローバル経済が維持できなくなりブロック経済化していった状況を説明した。当時の常識であった金本位制を維持するの政策によって各国はデフレと金利上昇に見舞われ、…

なぜ日本は戦争を選択したのか(13)満州事件のツケ・日貨排斥運動の広がりーーー松元崇の財政分析から学ぶ

※政府が事後的に満州事変を認めた背景、第一次上海事件、満州事変の国内の評価の項目を追加しました。 シリーズ(10)(11)(12)では国際グローバルスタンダードであった金本位制が崩壊し、グローバル経済が維持できなくなりブロック経済化していった状況…

なぜ日本は戦争を選択したのか(12)金本位制はなぜ崩壊したのか、ドイツ賠償問題ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シーリズ(11)では金本位制が崩壊する状況を、時を前後してシリーズ(10)では、国際金融の常識である金本位制に復帰した日本が経済悪化で政治不安を呼び起こした状況について触れました。 kyoyamayuko.hatenablog.com 前回はドイツに触れず金本位制の崩壊…

なぜ日本は戦争を選択したのか(11)世界はまさかの金本位制離脱へ、ブロック経済へーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(10)では、旧平価の金本位制の復活(金解禁)のためデフレ経済を選択し、厳しい緊縮財政を行った。金解禁政策を争点にした総選挙で与党が大勝し、メディアも民衆も支持した。緊縮財政とは軍縮の実施である。世界的にも軍縮の流れにあり、ロンドン…

なぜ日本は戦争を選択したのか(10)金解禁不況、ロンドン軍縮会議と統帥権干犯ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

(8)では平和外交(=軟弱外交)から積極外交に転換し、不穏な中国情勢に対応して出兵した結果、日本人居留民が惨殺された済南事件が起こり国内世論は中国へ厳しい目が向けられるなか張作霖爆殺事件が起こる。(9)では日露戦争後、地方では行政費用が増加…

なぜ日本は戦争を選択したのか(9)地方税の増税と都市との格差拡大で疲弊する農村ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(7)では内政重視の平和外交=軟弱外交で悪化した財政を立て直すために緊縮財政(軍縮)をすすめ、複雑化する中国の混乱に不介入を貫いたことで、枢密院や陸軍の不満が高まっていった。昭和恐慌の対応で失敗し、与党の憲政会が下野し、政友会が与…

なぜ日本は戦争を選択したのか(8)中国の排日と日本の「暴支鷹懲」の悪循環の始まりーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(7)では与党の憲政会はが緊縮財政と平和外交で内政重視の政策を行い、関東大震災の震災手形の処理を始めたが、与野党の対立が激化して信用不安が起きた。同時期、中国大陸では蒋介石が第一次北伐を開始、南京を占拠して居留民に迫害を加えた(192…

なぜ日本は戦争を選択したのか(7)昭和大恐慌ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

バタバタしていて間が空いてしまったが再開したい。 松元崇先生についていきます。 シリーズ(4)では世界大戦後は国際環境が一変、帝政ロシアが消滅し互いに認め合っていた満州利権が御破算となり、アメリカが台頭してきて中国利権に口出してくるなか、世…

なぜ日本は戦争を選択したのか(6)宇垣軍縮ショックと陸軍の裏資金・裏工作ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(2)(3)では日露戦争の借金と金利負担で四苦八苦していたが第一次世界大戦のおかげで借金返済し、債務国から債権国のイケイケに、(4)では世界大戦後は国際環境が一変、帝政ロシアが消滅し互いに認め合っていた満州利権が御破算となり、アメ…

なぜ日本は戦争を選択したのか(5)関東大震災ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(2)の 日露戦争では財政的な負け戦、(3)では日露戦争後は借金と金利負担で四苦八苦していたが第一次世界大戦のおかげで借金返済し、債務国から債権国のイケイケに、(4)では世界大戦後は国際環境が一変、帝政ロシアが消滅し互いに認め合って…

なぜ日本は戦争を選択したのか(4)第一次世界大戦後の日本の状況ーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(1)では明治政府は借金付け、(2)の日露戦争は財政的な負け戦で政府は火の車だし、国民は重税で大変だった、(3)では日露戦争後は借金と金利負担で四苦八苦するなか正貨流出で追い込まれていたが第一次世界大戦のおかげで借金返済し、正貨流…

なぜ日本は戦争を選択したのか(3)第一次世界大戦までーーー松元崇の財政分析から学ぶ

シリーズ(1)では明治政府は借金付け、(2)の日露戦争は財政的な負け戦で政府は火の車だし、国民は重税で大変だったとというところまで書きました。 kyoyamayuko.hatenablog.com 松元崇さんの本から学んでいきたいと思います。書いてまとめると、難しい…

なぜ日本は戦争を選択したのか(2)日露戦争までーーー松元崇の財政分析から学ぶ

前回は日清戦争まで書きました。日中戦争、太平洋戦争のところからさくっと書いてまとめたいと思ったのですが、そこから書くとよくわからないし、勉強がてら明治政府以降の流れをまとめています。 引き続き松元崇の本を参考にしてまとめていきます。 kyoyama…

なぜ日本は戦争を選択したのか(1)日清戦争までーーー松元崇の財政分析から学ぶ

日本はなぜ戦争を選択したのか。 一般的なイメージでは、第一次世界戦後の世界的不況のなか、日本も窮乏し、経済的に追い込まれて満州に進出(侵略)、これが世界的に批判されて経済封鎖され、日本は追い込まれて太平洋戦争に突入した、というのが定説かもし…

古海忠之(1)ーーー渡満から満州財政、そして阿片政策

「満州国」総務庁次長の古海忠之に関心をもっている人は今の日本では数名しかいないかもしれない。古海忠之を知れば知るほどひかれていくのだが、これまで読んだ本を踏まえて、忘れ去られつつある古海忠之を多角的に描いていきたいと思う。 古海忠之※注1 渡…