世界が混沌として不透明な時代になってきた。
民主主義より権威主義がはびこる時代になってきた。
強いものこそ正義なのか。
弱者は黙って従い耐えるしかないのだろうか。
自分たちの自由と平等を守るにはどうしたらよいのだろうか。
自分たちの自由を守るのは自分たちなのだ。
興味深い事例を収集して戦い方をまとめていきたい。
反戦デモはグレーゾーン?
最近話題になった「防衛省幕僚の勉強会で反戦デモはグレーゾーンと表記」事案。
ネット記事は消えてしまうことが多いので一部抜粋しておこう。
陸上幕僚監部がおととし2月、記者向けに陸上自衛隊の活動を紹介するために作成した資料で、「予想される新たな戦いの様相」として、テロやサイバー攻撃とともに反戦デモを例に挙げ、武力攻撃に至らない手段で自らの主張を相手に強要する「グレーゾーン事態」にあたると表記していました。 松野官房長官は合法的に行われている場合も含まれてしまっており、「不適切」としています。 (06日22:13)
20220406 23:34 TBS NEWS をYahoo!ニュースが配信
確かに反戦デモは、デモを利用した活動もあるのかもしれない。
が、そう決めつけて取り締まることは危険ではないだろうか。
ロシアの軍事進攻以降、ロシア国内では反戦デモが多発しているが、まさに治安を不安定させるもの、ウクライナについてフェイクニュースを流して扇動するものとして逮捕されている。
これは正しい行為なのだろうか。
反戦デモの中には欧米から支援を得て活動している者がいるかもしれないが、だからといってすべての人がそうではないだろう。
反戦デモの取締りは、ロシア政府、プーチン大統領の利権を守る行為だ。
日本でも反戦デモを取り締まるようなことが起きたら、それは政府にとって都合が悪いことがあるからだと思った方がよいだろう。
道警ヤジ排除事件
でも、日本でそんなこと起こらないよ?
日本は平和だし、反戦デモで捕まることはないでしょ?
それがあったんです!
反戦デモではないけれど。
しかもつい最近ですよ?
2019年の話です。
それが道警ヤジ排除事件です。
あらましはこちらになります。
2019年7月15日に札幌駅前などの路上で起きた事件です。当時は参議院選挙の真っ只中で、自民党の公認候補を応援するため、この日は安倍晋三内閣総理大臣(当時)による街頭演説が行われていました。そのとき、群衆の中から「安倍やめろ」「増税反対」などとヤジを飛ばす人や、政策に批判的なプラカードを掲げる人が現れました。
しかしその人たちが自分の意見を主張できたのは一瞬でした。あっという間に大勢の警察官が集まってきて、彼らを囲み、押したり引きずったりして、強制的に排除したからです。
デモなんかしたこともないチキンの私からすると、
演説中の政治家に野次なんかしたら排除されるもんなんじゃないの?って思います。
でも、そうじゃないらしい。
警察は自民党の警備員ではありません。民主主義国家の警察は、特定の政党の利益のために、人々の政治的な言動を制限してはいけないことになっています。しかしこの日、警察官たちは法的根拠も明らかではないままに、自民党とは異なる意見を持つ人々の口を封じてしまったのです。
へ~~、そうなのか。
そんなことすら知らなかった。
要人は守られて当然で、ヤジったら取り締まられるもんなのかと思ってました。
でも、確かに安倍晋三やめろ、とか、増税反対くらい自由に言いたいですよね。
ヤジで排除された二人は、警備をしていた道警に対して訴訟を起こしました。
そして3年たち判決がでました。
なんと勝訴です。
判決内容はこちらになります。
札幌地裁で勝訴しました(要旨・判決文あり)yajipoi.wordpress.com
訴訟の焦点は「表現の自由」の侵害と「警察官職務執行法(警職法)」による排除の行使は適法なのか、です。ヤジは表現の自由なのではないか。それを警職法で取り締まるのは行き過ぎではないのか、という問題でした。
◯ 撮影されていた動画などの関係各証拠によれば、当時、「生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」にあったとか(警職法4条1項)、「犯罪がまさに行われようと」していた(同法5条)などとは認められず、警察官らの上記行為は適法な職務執行とはいえないのであって、これらの行為は違法である。
警職法の「危険な事態」にはあたらないため、排除行為は違法だと判定されました。
また、表現の自由については、
◯ 原告らの発言は、いささか上品さを欠くきらいはあるものの、いずれも公共的・政治的事項に関する表現行為であるところ、警察官らの上記行為は、このような原告らの表現行為の内容ないし態様が街頭演説の場にそぐわないものと判断して、当該表現行為そのものを制限し、また制限しようとしたものと推認される。
◯ 表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による制限を受けるものであるが、被告からは、原告らの表現行為自体が「関係者らにおいて選挙活動をする自由」を侵害しているとか、「聴衆において街頭演説を聞く自由」を侵害しているなどの主張も出ていない。
◯ 原告らの表現の自由は、警察官らによって侵害されたものというべきである。
裁判所は「表現の自由の侵害」を認めました。
こうやって普通の人々が訴訟を起こし、戦うことで自由を「維持」することができるんですね。
侮辱罪にあたるのではないか?
いやいやいや、でも安倍晋三やめろは失礼だろ!
侮辱罪にあたるんじゃないの?
そういう質問もでてくるだろう。
それに対してヤジポイの会(@yajipoi0810)のTwitterアカウントでは以下のようなやりとりがありました。
「真面目に質問」されているそうなので、一応、最低限の回答をしようと思いますが、「侮辱的なヤジであれば侮辱罪に該当することはありうる」というのが一般論です。
— ヤジポイの会【勝訴】 (@yajipoi0810) 2022年4月3日
その上で、ヤジ排除におけるヤジについて(もしも万が一)侮辱罪に該当するとしても、警察による排除は違法であることを説明します。 https://t.co/XH0w3J3del
というのも、道警が排除の根拠として持ち出している警察官職務執行法第四条、第五条は、その有形力行使の要件として「差し迫った危険な事態」や「人の生命もしくは身体に危険が及ぶ状況」などを設けており、侮辱行為だけでは、これを満たさないからです。https://t.co/WxssGTDCVG
— ヤジポイの会【勝訴】 (@yajipoi0810) 2022年4月3日
もしも道警がそのような主張(「侮辱だから排除した」)を採用していたら、裁判もここまで長引かずにこちらが圧勝していたと思います。
— ヤジポイの会【勝訴】 (@yajipoi0810) 2022年4月3日
なお、付け加えると侮辱罪は親告罪なので、被害者本人が申し出る前から警察官が先んじて逮捕するということもありえません。
最初の引用ツイートは鍵をかけてしまったので見ることができなくなっていますが、侮辱罪じゃないの?という質問に対してヤジポイの会の方が丁寧に回答しています。
ヤジの排除として道警が公職選挙法、侮辱罪、名誉毀損罪を根拠には取り締まっていないかった。もしくは、これを根拠に取り締まったことにすると違法であることが最初から予測できているので、これらの法律を根拠にせず警職法で対処したものを見られます。
が、それで道警は法的根拠無し、表現の自由を侵害したとして裁判に負けちゃいます。
ヤジ排除問題が起きた当時、ネットでは侮辱罪だと騒いでいました。
しかし、侮辱罪による排除ならば、侮辱された人が警察にいき手続きをしなければいけません。その場で排除はできないということになります。
表現の自由は守られた。それは右派左派を超えて守られるもの。
ここまでの流れを見るとリベラル、サヨクの勝ちって感じで読んでいる人がいるかもしれない。
しかし、表現の自由はポジション問題ではない。
ヤジポイの会のツイートにありますが、チャンネル桜でヤジ排除判決について触れていたそうだ。
「チャンネル桜」でもヤジ排除訴訟のことを取り上げてくれるんですね〜。注目されてるようでなんだか嬉しいです。笑 https://t.co/kcIWCRjTXN
— ヤジポイの会【勝訴】 (@yajipoi0810) 2022年4月7日
実は民主党時代にも与党の演説中に民主党批判(罵倒?)や「原発反対」などのプラカードを出した人が警備の警察によって端に追いやられる(排除される)事案がありました。これについてはチャンネル桜でも取り上げられ、「異なる意見を排除するのはいけない」と至極真っ当な言論擁護をしていました。
— ヤジポイの会【勝訴】 (@yajipoi0810) 2022年4月7日
当然でしょう。
でも、ヘイトスピーチはヘイトスピーチ解消法で「表現の自由」*1が規制されているので注意しましょう。
民主主義社会って表現の自由があって大変ですよね。
いろんな意見があり、自分とは相容れない意見だってある。
そんなんだったら「一つの声」の方がラクかもしれない・・・そんなときはロシアを思い出しましょう。
「一つの声=プーチンの声」しかない社会は、それはそれで窮屈ではありませんか?
今ある自由を死守したい。
ヤジポイの会の道警ヤジ排除訴訟には最大の拍手を送りたい。