kyoyamayukoのブログ

私の墓にはルピナスを飾っておくれ

さよならは突然やってくるー谷川俊太郎詩集「はだか」

 

さようなら

ぼくもういかなきゃなんない

すぐいかなきゃなんない

どこへいくのかわからないけれど

さくらのなみきのしたをとおって

おおどおりのしんごうでわたって

いつもながめているやまをめじるしに

ひとりでいかなきゃなんない

どうしてなのかしらないけれど

おかあさんごめんなさい

おとうさんにやさしくしてあげて

ぼくすききらいいわずなんでもたべる

ほんもいまよりたくさんよむとおもう

よるになったらほしをみる

ひるはいろんなひととはなしをする

そしてきっといちばんすきなものをみつける

みつけたらたいせつにしぬまでいきる

だからとおくにいってもさびしくないよ

ぼくもういかなきゃなんない

 

谷川俊太郎の『はだか』の「さようなら」が頭の中で響く。

子どもは、正確に言うと子どもの中の幼児が、さよならもいわずにさよならしてしまった。いつかはやってくるとわかっていたのに、頭ではわかっていたはずなのに。幼児のあの子はもういない。いなくなってしまった。

 

はだか

 

いっちゃった

いっちゃった

すべてを委ねてくれたあの子はもういない

ありがとう

ありがとう

私、とっても楽しかった

私も思いっきり甘えたよ

ありがとう

ありがとう

安心してね。あなたの温もりは忘れない。

お母さんは大丈夫。

大丈夫だから気をつけていってね

あなたがいってしまってもお母さんは忘れない

お母さんは大丈夫だよ

さようなら、ありがとう

 

 

 

自分のことを名前ではなく「おれ」と言うようになって

あの子はさっと消えてしまった。