kyoyamayukoのブログ

私の墓にはルピナスを飾っておくれ

香川1区ーーー組織的な投票行動に勝つのは、個人の一人一人の力だった

ドキュメンタリー映画「香川1区」は立憲民主党の国会議員・小川淳也ドキュメンタリー映画だ。

www.kagawa1ku.com

 

 この映画は「なぜ君は総理大臣になれないのか」の映画の続編になる。こちらの作品を見なくても「香川1区」から見ても、単体の作品として楽しめるが、やはり「なぜ君」から見た方がより楽しめるのは間違いない。なぜなら選挙の空気が一変しているからだ。www.nazekimi.com

 

 この映画はのどちらも共通しているのは、小川淳也の政策についてはほぼふれていない。選挙戦の様子を撮っているが、ありのままの小川淳也さんが映し出されているわけだ。両方見ても小川淳也の印象は変わらないだろう。ひたすら真っすぐ、見方によっては青臭い政治家だ。青臭いんだけど嫌いにはなれない。いいやつなのはよくわかるからだ。50歳になってもピュアさは変わらない(笑)。ある意味すごいやろ。

 選挙区の香川1区は、香川県の新聞社とテレビ社を牛耳る一族・平井卓也自民党議院が支配する地域だ。三世議院であり、デジタル大臣になったので有名だろう。かたや小川淳也は、パーマ屋の息子であり、地盤、看板なし。一族に政治経験者はゼロ。しかし、彼は東大法学部出身のエリートで自治省勤務後に「日本を変えたい」と出馬している。公立高校の野球部。庶民の出なんだけど、頭がよかったんですね。地方の進高校にはこういう頭のいい人はたまにいますよね。都会の私立進学校にはいそうもない、直球勝負の青臭さは地方出身エリートの特徴かもしれませんね。

 「なぜ君」より「香川1区」は二人の国会議員の対比を強調するようになりましたが、しかし、選挙の様子を映しているのには変わりはありません。

 

 正直言って、香川1区が二時間半もある映画だと知って「長いな」と思ってました。でも「いま君」も見たし、義務感で見に行ったのですが、

 

いや~~!!!

 

おもしろかったです!!!

 

二時間半、あっという間でした。!!!

 

 

この面白さはなんなんだろな。

「いま君」は選挙の大変さを余すことなく映して負ける映画なんだけど、

「香川1区」は選挙の大変さが報われる爽快感があった。

 

明らかに風は変わった。小川淳也さんに吹く風は変わった。

変えたのはもちろん「いま君」のドキュメンタリー映画でしょう。

でも、映画はやはり媒体に過ぎない。

映画を見て、小川淳也の人となり、奥さんと子供達、両親、選挙を手伝う人々の姿を見て、「普通の人が国政選挙をするってこんなに大変なのか」

「ここまでやっても勝てないのか」ということを知ったわけなんですよね。

で、香川県の人だけでなく日本中の人が小川淳也さんを知っちゃったんですよね。

 

正直いって、党内の権力闘争についてもよくわかっていなかったんですよ。

比例復活組は党内で昇進できない。党内で役職につけなければ、自分の実現したい政策を主張できない。。。

あぁ、そうなのかって思ったんですよね。

小選挙区で勝てず比例復活するという厳しさを初めて理解したわけです。

だって、みんなこう思ってますよね。

「落ちたくせに比例復活とはいいご身分だよね」と。

でも、比例復活ではダメなのだ。総理を目指す男ならなおさらだ。

 

「いま君」のラストは安アパートでの夫婦の姿の撮影でした。

国会議員がこんなところに住むなんて信じられません。

次の選挙のお金のために節約していたのかもしれません。。。

 

 

そして、「香川1区」です。

明らかに選挙の風景が違うのです。

「いま君」を見た無数の無党派の方々が、小川淳也さんの選挙事務所に来て手伝う。

小川淳也さんの人となりを知って、手伝いたくなってしまった人たち。

それまでは家族とおそらく労組中心の選挙運動だったわけですが、小川淳也にほれた人たちが手伝いはじめた。

町で選挙運動していると、みなが話しかけてくる。

無党派の女性が小川淳也さんに質問する姿は感動的だった。

香川1区の市民は、小川淳也さんなら自分の意見をいってみたいという思いに駆られたのではないだろうか。

 

「いま君」と比べるとよくわかる。

こちらは小川淳也の青臭いからまわり劇場だった。

でも、その空回りする小川淳也さんを見て、心を動かされた人がたくさんいた。

こんなに頑張っている人がいるんだと気づいた。

「香川1区」は変化する市民を映した映画だった。

 

もう一つの面白さは、平井卓也陣営の姿だろう。

余裕しゃくしゃくだった平井陣営が徐々に余裕が無くなり、攻撃しはじめる。

プロデューサーの前田亜紀さんの根性に脱帽だ。

怖かったと思いますよ。

また、パー券問題や不在投票を管理するシステムを暴いたのも見所の一つだろう。

映画を撮っていることを知って、不満を抱えている平井派の市民が情報提供したわけだ。

でも、これは映画の余波の一つに過ぎない。

正義のために既存の古い政治システムを暴くドキュメンタリーでは決っしてない。

小川淳也を撮っていたら、闇が勝手に暴かれたに過ぎない。

映画が選挙の風通しをよくしたのだ。

 

 

この映画の面白さはなんだろう。

うまく言葉にできないが、何かが変わって動いていることを映したのは間違いない。

「いま君」ではわりと冷めていた監督も、

「香川1区」ではアツくなっている!

監督すら傍観者ではいられなくなっている。

必死に傍観者になろうとしてもなれなくなっていることがわかる。

これが選挙の魔力だろう。

 

政治は組織票の世界だ。

「香川1区」の小川淳也の壮行会では連合の人が挨拶をしていた。

小川淳也陣営だって労組の組織票に依存している。

映画では触れていないが、選挙運動に動員しているかもしれない。

でも、決して組織票だけではどうにもならない部分を映したのがこの二つのドキュメンタリー映画ではないのだろうか。

既存の政治システムに穴をあけたのは、組織票の世界に穴をあけたのは、個人一人一人の応援だった。

ドキュメンタリーを媒介に小川淳也を知った人々が、それぞれ動いたのだ。

この人のために何かしたい、

この人ならもっとよい社会になるんじゃないのか

希望を小川淳也に託したのだ。

 

このドキュメンタリー映画は、香川県の市民の政治意識を明らかに変えたのだ。

保守的な地方都市に風が吹いたのだ。

「いま君」では50歳で政治家を辞めると主張していた小川淳也は、

50歳からが第二の人生のはじまりなのかも知れない。

ロード・オブ・ザ・総理大臣。

ようやく第一歩を踏み出したのだ。

 

そして、ラストにはまたあの安アパートが映る。

子供は独立し、小川夫妻が住むアパート。

玄関には花のブーケが飾られていて、リビングの片隅も飾り付けしている。

選挙では自分の時間なんかない奥さん(名前忘れてごめんなさい)の

日常を楽しむ様子が垣間見られた。

外のお花にも水をたっぷりあげて高松の生活を楽しむ姿が想像できた。

毎回、選挙の手伝い、お疲れ様です。

 

 

 

 

余談になりますが、パンフレットを読んで

大島新監督が大島渚監督の息子だと知りました。

いわば二世なわけです。

二世は二世なりの辛さがあることを知っている人でしょう。

監督が平井卓也をどのような思いで撮ったのか、聞いてみたい気になりました。